【第5回】 「すみだっ子2世」。人の世界では珍しくないけど、こちらではどうなの?

先日、新宿区のほうに出掛ける機会がありました。その際、折角なので立ち寄ったところは永井荷風さんにとてもゆかりの深い地。それがきっかけで、墨田区のある名所に彼らを訪ねることになったのでした。

かつての永井邸は、「監獄」の近くにあった

先日の立ち寄り先の住所は、新宿区余丁町。若松河田駅(都営地下鉄大江戸線)から歩いて10分足らずの高台にあります。クリニックが建つ敷地には、こんな案内看板がありました。荷風さんがかつて住んだ邸宅の跡地の一部なのです。

永井荷風旧居跡

新宿区指定史跡の案内看板です。5年間の海外滞在をはさんで、延べ11年以上この地に暮した荷風さんは、邸宅の一角の自身の部屋を「断腸亭」と名づけました。

荷風さんが、5年間にわたるアメリカ・フランスの海外滞在から帰国した直後の塞いだ気持ちをこの地で記した短い小説が『監獄署の裏』です。海外での開放的で気ままだった生活に比べて、日本に戻ってからの窮屈な日々。小説というよりも随筆に近いタッチで、永井邸のすぐ近くにあった監獄(拘置所、刑務所)周辺のことも詳しく描写しています。昔と今の地図で比べると、こんな位置関係だったようです。

【永井荷風旧居跡(新宿区余丁町)の位置図】

【永井荷風旧居跡(新宿区余丁町)の位置図】

[出典] 時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」
地図のうち、左側は明治42(1909)年測図。右側は現在のものです。
(上記のとおり、青色★印とその吹き出し説明、並びに赤色破線を加筆しています)

左側の地図(ヨコ書きの文字は、右から左に読みます)には、「東京監獄」や「市ヶ谷監獄」の文字が確認でき、当時の永井邸が「監獄」に隣接していた様子がわかります。

この短編作品が、『ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短編29』の最初に登場しています。イギリスの老舗出版社が外人の作家・翻訳家に編纂を委ねて刊行した原書(外書)を逆輸入したような存在の本で、2019年2月に発売されました。

荷風さんが発表して110年も経ってから、いわばオールジャパンの1番バッターとして再評価してくれたような感じです。そんな「ペンギン」のことを考えていたら、本物に会いたくなってきたのでした。

本物のペンギンといえば「すみだ水族館」

本物のペンギンに会うなら、迷わず「すみだ水族館」ですね。平日に午後休みを取って向かいました。

すみだ水族館

東京スカイツリータウンの東京ソラマチ5階・6階にあります。完全人工海水の都市型水族館で、2012年5月22日に開業しました。

こちらにいるのは「マゼランペンギン」です。18種類あるといわれるペンギン。外観も体の大きさもそれぞれですが、似ているとよく指摘される「フンボルトペンギン」との違いをおさらいしておきましょう。

ペンギン

こうして見ると、とてもよく似ています。見分けるポイントは、首から胸にかけての帯の数。マゼランペンギンは2本あるのね!

すみだ水族館

入口とチケットカウンター。入場料金は、大人2,300円、高校生1,700円、中・小学生1,100円、幼児700円です。

おトクなのが年間パスポート。それぞれの入場料金の倍の金額で1年間通い放題になり、館内のショップやカフェの割引、同伴者の入場料金割引ほかの特典も用意されています。(当日中なら入場券で観覧した後でも、1回分の入場料金を追加して年間パスポートを買えます)

こどもたちにとって「水族館が、がっこうになる。」アクアアカデミー企画には、楽しいイベントやプログラムが盛りだくさんです。年間パスポートを活用すれば、気軽に入場して参加できますね。

[参考資料]
すみだ水族館ホームページ内「アクアアカデミー」
https://www.sumida-aquarium.com/aqua-academy/

私も、年間パスポートをゲットして入場しました。館内には、多彩な飼育生物がいます。その一部を写真や動画でご紹介します。

クラゲ

ライトアップされたクラゲの水槽は、とても幻想的な雰囲気です。

ペンギンと並ぶ人気者のチンアナゴ。ひょうきんで愛嬌のある動きは、ぜひ動画でご覧ください。

館内で一番広いスペースが、ペンギンのいるゾーン。岩場に立ったり、泳いだり。その姿にペンギンらしさを感じます。そして、水中をスイスイ泳ぐさまは、とても楽しそうです。それらも動画で見てください。

館内には「ペンギン カフェ」もあります。

ペンギン カフェ

カフェの前景。写真右下端に見える食品の見本。実は、2種類のアナゴをかたどった長いパンです。とてもユーモラスな姿ですね。

すみだ すいすいドーナツ

カフェラテは、年間パスポート提示で350円が100円に大幅割引! 合成着色料や防腐剤が不使用でからだにやさしい「すみだ すいすいドーナツ」(580円)は、ペンギンと金魚の2種類が選べます。今回はペンギンにしました。

ペンギンの「すみだっ子2世」も誕生しています

すみだ水族館は昨年5月に開業10周年を迎えました。50羽ほどいるペンギンのうち20羽が、この水族館で生まれた「すみだっ子」。そして、昨年4月に生まれた「だいふく」は父親もここ生まれなので、初の「すみだっ子2世」となりました。

人間の世界では、すみだっ子2世は珍しくないですが、都会の一角でペンギンたちも世代を受け継ぎながら、しっかりとすみだに根づいてる。何だか、ほっこりとした気持ちになりますね。

20羽のすみだっ子に特別住民票が贈られたり、水族館の美男美女夫婦ペンギンのイラストをあしらったオリジナルの婚姻届用紙を期間限定で配布したり。すみだ水族館の開業10周年を墨田区もいろいろな企画で盛り上げてくれました。

午後から出掛けた水族館。館内あちこちを楽しく見ていたら、あっという間に夕暮れ時でした。

近くのお店で夕食とちょっぴり晩酌を・・・

今日は平日なので、ちょっぴり晩酌を兼ねた夕食にしましょう。訪ねた「ししまる食堂」は、とうきょうスカイツリー駅や押上駅からも近くて便利なところにあります。外観などからはすぐに想像できませんが、このお店の中心メニュー、実はうどんです。

ししまる食堂

「ししまる食堂」の外観。入口の白い引き戸の向こうに、店内のレトロな雰囲気がうかがえます。

ししまる食堂

店内はまずカウンター席があって、その奥に座敷があります。昭和レトロの雰囲気に満たされた空間は、何だかほっとする気持ちにさせてくれます。

女性ご店主の山崎さんがこのお店をオープンしたのは、2010年10月。もともとお父様が国分寺で手(足)打ちうどんの人気店を営んでいたことが、うどん中心メニューのきっかけです。押上の地に開店したのは、たまたまの縁だったようです。

店名の「ししまる」は、マンガやテレビアニメで人気のあった『忍者ハットリくん』に登場する忍者犬「獅子丸」にちなんでいるそうです。ちくわをとても愛していたので、料理メニューのちくわ天も「ししまる」となっています。

まずは、生レモンサワーと、つまみに「あいもり」を注文しました。合い盛りされているのは、ししまる(ちくわ天)ととり天です。とり天は、から揚げとは違い天ぷらの衣で揚げたもの。大分県のソウルフードといわれています。

あいもり

「あいもり」(550円)。ちくわ天には無料で中にチーズを入れて揚げてくれるのが、嬉しいサービス。ポン酢に添えられたペーストは、大分県ほか九州名物の柚子胡椒(ゆずこしょう)。「胡椒」といいながら、原材料は柚子と唐辛子。胡椒は使われていません。面白いですね。

とり天や柚子胡椒に触発されて、2杯目は大分麦焼酎の水割りに。つまみは、こちらを追加しました。

ブルーチーズのタルティーヌ

ブルーチーズのタルティーヌ(フランス風のオープンサンドウィッチ、550円)。イチジクとクルミ入りの全粒粉パンとハチミツがチーズに合います。パン教室を開いていたお店の元スタッフ伝来のレシピだそうです。

シメの食事はもちろん、うどんをいただきました。手打ちうどんは、茨城県の真壁町に移転して営業している(今はテイクアウト専門)お父様から直送されたものです。とてもコシがあって、豚肉と玉ねぎの温かいつけ汁にとてもよく合います。

手打ちうどん・肉汁

手打ちうどん・肉汁(770円)にトッピング辛旨茄子(110円、写真右上)を追加。途中で辛旨茄子を汁に入れると、あら不思議、カレー味に味変します。

お腹もいっぱい、そしてホロ酔い具合の心地よさ。大満足でお店をあとにしました。

花風

今日のさんぽ を振り返って

先日訪れた、荷風さんの邸宅があった土地がきっかけとなって、すみだのペンギンたちに会えました。これから年間パスポートを使って、ペンギンやいろいろな生きものたちと気軽に再会できるのが楽しみです。

荷風さんの若きの日の自伝的短編小説『監獄署の裏』は明るいトーンではなかったけれど、110年もの時を経て、イギリスの「ペンギン」に再評価されました。日本のすみだのペンギンも、これから「すみだっ子」として2世・3世・・・・・・と世代を重ねていくのでしょう。それぞれにどんな未来が待っているのかなぁ? では、皆さんまたお会いしましょうね・・・。

【お店情報】
すみだ水族館
東京都墨田区押上1-1-2 東京スカイツリータウン・ソラマチ5F・6F
TEL:03-5619-1821(開館時間から18時まで)
営業時間
(平日)10:00~20:00(最終入場:閉館時間の1時間前)
(土曜・日曜・祝日)9:00~21:00(最終入場:閉館時間の1時間前)
休館日:年中無休(水族館のメンテナンスやイベント等により入場できない場合あり)

ししまる食堂
東京都墨田区押上1-16-7 シマダハイツ1階右
TEL:03-5637-7734
営業時間
(月曜~金曜)11:00~14:00(L.O13:30)/18:00~22:00(L.O21:30)
(土曜)11:00~14:00(L.O13:30)
定休日:日曜・祝日

【参考】
永井荷風旧居跡
東京都新宿区余丁町14-3