【第2回】 東京スカイツリーの頂上付近に、日光東照宮が浮かんでいる?

学生時代の友人からLINEで連絡をもらいました。先日、彼女が家族と日光を旅したとき、「有名な日光東照宮に向かう参道で風変わりな案内看板を見たよ!」という内容でした。添えられた写真を見ると、その場所は東京スカイツリーの頂上と同じ高さ(標高634m)らしいのです。

日光東照宮に向かう参道

これが、風変わりな案内看板。ここから看板の左側方向に少し上ったところに日光東照宮があるそうです。

もしも同じ場所だったら、日光東照宮は東京スカイツリーの頂上付近に浮かんでいるんだ! そう考えると気になって、東京スカイツリーに出かけてみました。見上げると頂上は、はるかな先。電車などで移動すると少しずつ上っていくので実感できないけれど、日光はかなり高いところにあるんですね。

東京スカイツリー

隅田川越しに見た東京スカイツリー。少し離れたほうが、その高さ(頂上で標高634m)を実感しやすいです。左隣りのビルでも実は頂上で158mもあるそうなので、東京スカイツリーは本当にズバ抜けて高いのね! このあたりを含む昔の地名「武蔵国=むさしのくに」の「む」・「さ」・「し」を数字(634)に置き換えた高さになっています。

東京スカイツリー

すぐ近くから見上げた東京スカイツリー。頂上のほうをずっと見ていると首が痛くなってくるほどです。改めて、その高さを実感しました。

さて、日光のことを知るには観光パンフレットが便利ですよね。そこで、東京スカイツリータウンの東京ソラマチ4階にある「とちまるショップ」を訪ねてみました。ここは、栃木県のアンテナショップ。さまざまな観光パンフレットが手に入るし、県内各地ならではの飲食品や物産品が販売されています。

とちまるショップの外景。

とちまるショップの外景。写真右端に観光パンフレットのラックが見えます。店内にもコーナーがあって、いろいろなパンフレットが手に入ります。

宇都宮餃子

店内には、宇都宮餃子のコーナーも充実しています。

レモン牛乳

栃木県民ご愛用といわれる「レモン牛乳」が冷蔵庫にたくさん。正式名称は「関東・栃木レモン」なんですね。無果汁だから、牛乳とレモンの組み合わせでも凝固しないのね!

日光のパンフレットもすぐに見つかりました。有名な日光東照宮は、同じエリア内の日光二荒山神社、日光山輪王寺とともに「二社一寺」を構成していること、そして1999年にユネスコ世界遺産の文化遺産に登録された「日光の社寺」の中心的存在となっていることなどがわかりました。

パンフレットにあった日光東照宮の各施設の写真

パンフレットにあった日光東照宮の各施設の写真です。ゴージャスな陽明門はもちろん、五重の塔も目立ちます。五重の塔の「心柱」、実は東京スカイツリーと同じ中空構造。こんなところにも不思議な縁を感じます。

日光といえば、永井荷風さんの『毎日見聞録』のことを思い出しました。有名な『断腸亭日乗』とともに、こちらも荷風さんの日記文学。デパートで全国名産菓子展示会が開催されることを紹介したくだりがあるのですが、名産菓子の1つに挙げられていたのが「日光羊羹」。日光には関係ないけれど、『羊羹』という短編小説も書いている。大の甘党だった荷風さんの好みが偲ばれます。
そんなことを考えながら店内を見ていると、何と日光の羊羹を発見。折角の機会だったので、思わず買ってしまいました。

日光の羊羹

とちまるショップで買った日光の羊羹。税込870円(内容量260g)でした。甘さがほどよくて、おいしかったです。

友人からのLINEがきっかけで、思いがけず日光と東京スカイツリーを並べて考える機会となりました。そして、この羊羹。荷風さんが挙げていたのと同じものかどうかはわかりませんが、出会えたのも不思議な縁だったのでしょう。

ここ東京ソラマチの4階と日光東照宮では、600m以上の標高差があります。そして、荷風さんが日光羊羹に触れた作品を書いたのは1917年のこと。今年2022年とは、100年以上の時間差です。でも、このように大きな空間や時間の差をさっと埋めてくれるような気がする。この羊羹がとても身近に感じられて、ちょっぴり嬉しい気持ちになったのでした。

とちまるショップに行く前に、今回のきっかけを作ってくれた友人にLINEを返しておきました。「こんなにはるかな頂上あたりに、日光東照宮が浮かんでいる。高さとしては、こんな関係なのよ」そうしたコメントに東京スカイツリーを見上げた写真を添えて送ったら、あとで返事が来ました。今日は夕方から時間があるので久しぶりに飲まないかとのお誘い。もちろん、即オーケー。

そんなわけで、東京スカイツリーの近くの「伊酒屋 ばじりこ」で待ち合わせ。ばじりこ(=バジリコ)から連想されるように、「伊」太利亜と居「酒屋」を組み合わせたネーミングのイタめし居酒屋です。

伊酒屋 ばじりこ

「伊酒屋 ばじりこ」外観。表通りから少し入った静かな一角にあり、開店して3年ちょっとの新しい店です。角地に立つ店のもう一方側もガラス引き戸に短めのノレンが下げられ、店内の明るい様子が外からよく見えます。女子にも入りやすい雰囲気が嬉しいですね。

明るい店内

明るい店内は、カウンター席だけで構成されています。たくさん吊るされたグラスを眺めていると、思わずワインをどんどん飲みたくなってきますね。

可愛らしいマスコット

可愛らしいマスコットなどお店のロゴイラスト。服はイタリア国旗、髪の毛はバジリコの葉っぱと手が込んでいます。実はこれ、女性ご店主の八田さんが通っているキックボクシングジム(!)の会長さんが描いてくれたものだそうです。元全日本チャンピオンといういかめしくてマッチョなイメージからはちょっと想像できないような、優しさと繊細さが感じられます。

ルッコラとトマトのサラダ(左側)、フリッタータ(右側、イタリア版オムレツ)

友人と生ビールで乾杯。料理はまず、ルッコラとトマトのサラダ(左側)、フリッタータ(右側、イタリア版オムレツ)をいただきました。

生ハム

目の前で切り分けてくれる生ハム。これで1人前(30g)あって、700円足らずです。

白ワインの右側の料理はゼッポリーニ

白ワインの右側の料理はゼッポリーニ。ピザ生地ベースの揚げ餅風で、モチモチした食感が人気を呼んでいます。ちくわの磯辺揚げにも似た青のりの香ばしさは、何だか懐かしい味わいでした。

目の前で生ハムを切り分けてくれるなど本格さもありながら、肩の張らない雰囲気。料理はどれもおいしくて、値段もお手頃。気取ったイタリア料理店ではなく、まさに嬉しいイタめし大衆居酒屋でした。

東京スカイツリーと日光、そして永井荷風さん。友人からのLINEがきっかけとなって、いろいろな結びつきがわかりました。久しぶりに会えた友人とはそんな話題でも会話が弾んで、お酒も料理もどんどん進んでしまいました。では、皆さんまたお会いしましょうね・・・。

【お店情報】
とちまるショップ
東京都墨田区押上1-1-2 東京ソラマチ イーストヤード4F
TEL:03-5809-7280
営業時間:10:00〜21:00
定休日:無休

伊酒屋 ばじりこ
東京都墨田区業平2-9-10 1F
TEL:03-6658-5739
営業時間:(月曜〜木曜)17:00〜22:00、(金曜・土曜)17:00〜23:00
定休日:日曜・祝日(別途、不定休あり)